
Corduroyは、デパートのおもちゃ売り場にいるクマのぬいぐるみです。「いつか誰かが僕を買って、お家に連れて行ってくれないかな」と夢を見ています。
ある日、女の子がCorduroyを一目見て気に入ります。
しかし、ママが「今日はダメよ。これ、新しいようには見えないわ。ズボンのボタンが取れているじゃない」と言い、帰ってしまいました。
その夜、Corduroyはボタンを探すため、初めて閉店後のデパートを探検します。真っ暗な店内やエレベーターに驚くCorduroy。
たくさんの椅子やベッドが並べられた家具売り場を見たとき、「ここは宮殿に違いない! ずっと宮殿に住みたいと思っていたんだ」と憧れます。
結局、ボタンを見つける前に警備員に見つかってしまい、また陳列棚に逆戻り。
しかし次の日、朝一番のお客さんが彼の前に現れます。そう、昨日の女の子です! そして「私、リサ。あなたはうちの子になるのよ」と家に迎え入れます。こうしてCorduroyは、夢にまで見た家と、大切な友達を手に入れたのでした。
私がこの本と初めて出会ったのは30年前。その時はもちろん日本語版でしたが、クマが可愛くて何度も読んだことを覚えています。
この世界的ベストセラーを息子にも是非と思い、選んでみました。
まず息子が気に入った所が、「おもちゃには実は魂が宿っていて、夜は動き出す」という設定です。Corduroyがソロリと陳列棚から降りる様子に「動いた!」と驚いていました。自分のミニカーも、「僕が寝ている時、起きてくるかなあ?」と大いに想像力をかきたてられた様子でした。
また、Corduroyの転んだ音で警備員が駆けつけてくるのですが、3才児にはとてもスリリングなようで、「クマちゃん、警察に捕まっちゃうよ!」とドキドキしていました。
今回、久ぶりに読み返してみると、内容も挿絵も素晴らしく、初版から約半世紀も経っていると感じさせないことに驚きました。Corduroyの愛らしさや心理描写が繊細に表現され、どの時代も輝きを失わず、人々を惹きつける普遍的な魅力をCorduroyは持っているのでしょう。
主人公の愛らしさやスリリングな夜の探検など、この本の魅力は至る所にあります。しかし、作者が最も伝えたかった事は、home(家)という言葉に集約されるでしょう。
フリードマンは幼い時に母を亡くし、後見人に預けられました。その人は厳しく、父親は週末に尋ねてくるだけ。そんな環境を、フリードマンの息子・ロイは、「孤児だった」と表現しています。
Corduroyを買ってくれたのはリサという女の子でしたが、リサはママから「新品じゃなさそう」と言われようと、貯金箱を壊し、Corduroyを家に連れて帰ります。そして、“I like you the way you are.”(今のままのあなたが好きよ)と言いながら、新しいボタンを縫いつけてやるのです。
誰がなんと言おうと、ありのままの自分を受け入れてくれる場所。その場所こそがhomeであり、すべての子どもたちの望みだよ、という強いメッセージが伝わってきます。
この本を読み聞かせてあげる時は是非、お子さんにhomeに込められた意味を教えてあげて下さい。そして、「どんな時も、そのままのあなたが好きよ」と、ギュッと抱きしめてあげてください。そう、リサとCorduroyのように。
作者のドン・フリーマンは1908年、カリフォルニアに生まれました。 母との死別を経験した彼は、孤独な幼少期を送りますが、この出来事は彼の作品に大きな影響を与えます。
例えば作中に、次のようなCorduroyのセリフがあります。
原文
“I know I’ve always wanted a home!”
“I’ve always wanted a friend. ”
日本語訳
「ずっと家がほしかったんだ。」
「ずっと友だちがほしかったんだ。」
心の拠り所を求めていたフリードマンの心が見えてきます。
そんな孤独な彼を支え続けてきたのが、まさに芸術でした。すでに7才の時には、「何よりも芸術家になりたい」と、クレヨンと画用紙を手に、鋭い洞察力で多くの作品を描いてきました。どこに行くにも常にスケッチブックを持ち歩き、「これがないと裸でいる様な気分になる」と言う程でした。
幼少期こそ孤独なフリードマンでしたが、その後の人生は充実していました。芸術を通じて妻・リディアと出会い、子どもをもうけます。また、社交的な二人は、画家や音楽家など多くの友人に囲まれ、賑やかなニューヨークでの生活を送りました。 孤独を乗り越え、温かい家庭と友人を手に入れたCorduroyは、フリードマン自身と言えるでしょう。
家とは不思議なものです。温かく受け入れてくれる人がいて初めて「家」として機能します。そうでなければ、どんなに宮殿のように立派でも、それはただの箱に過ぎません。 子どもたちが何か困難にあった時、真っ先に「帰ろう」と思える場所を作ること。それが親の役目であり、喜びであると思わせてくれる一冊です。
ライター:MKN Nakajima
1歳と3歳の男の子のママです。
学生時代から英語が好きで、語学研修や海外文通などを通して英語に親しんできました。
私が英語を学んで強く感じたのは、「英語が自分の世界を広げてくれた」ということです。
子どもたちには、英語絵本を通して様々な価値観に触れ、多様性に満ちた社会を理解する力を培って欲しいと思っています。
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