
アメリカの作家ジーン・ジオンの「どろんこハリー」は、どろんこ好きのお子さんを持つお父さんお母さんには必見の絵本です。
ちょうど外遊びが活発になってくる幼稚園から小学生低学年のころには、どんなにきれいに洗濯しても、なぜか真っ黒に汚れて帰ってくる服に困り果てたものです!
そんな外遊び大好きなお子さんと「どろんこハリー」をぜひ一緒に読んでみてください。ハリーの徹底的などろんこ遊びと決定的なおふろ嫌いに思わず、「あ、うちの子みたいだ」とつぶやいてしまうはず!
ハリーみたいに一生懸命遊んでどろんこになったお子さんを叱らずに、ハリーの飼い主家族のように優しく丁寧に洗ってあげるのはいかがでしょうか? アメリカと日本ではおふろ事情も全然違うようですが、ぜひ親子で一緒におふろに入ってハリーがどんなにどろんこだったかお話してみてください。
ハリーは黒いぶちのある白い犬。そして大のおふろ嫌いでした! ある日あんまりおふろに入るのが嫌で、ブラシを裏庭に隠して、遊びに出かけてしまいます。
あらゆる場所で仲間の犬たちとたくさん遊んで、さあ家に帰ろうとしたら……なんと白いぶちのある黒い犬みたいになっていました!
ハリーの飼い主家族たちは、いくらハリーが芸を披露しても、全然ハリーだと気が付きません。途方に暮れたハリーが思い出したのは、あのいつものブラシ! ハリーは無事に家に戻ることができるのでしょうか?
ハリーがどんな犬として描かれているかは、絵を見ればすぐにわかります。いかにもわんぱくそうな、少しもじっとしていられない、それでいて愛嬌たっぷりで賢い犬。
おふろがいくら嫌いだからって、何もブラシを隠さなくてもいいのに! そんな風に思っていたら、実はちょっぴりあわてん坊で寂しがり屋のハリー、結局ブラシを探し出してまでおふろに入れてもらうことになるのです。
英語の絵本はどれも言葉のリズムを大事にしているので、やはり声に出して読んでみるのが一番です。
ハリーの中では最初の文章が後になって反対の言い回しで出てきます。
原文
“Harry was a white dog with black spots who liked everything,except……getting a bath.”日本語訳
「ハリーは、くろいぶちのある、しろいいぬです。なんでもすきだけど、おふろにはいることだけは、だいきらいでした。」
最初の文章で「黒ぶちの白い犬」と紹介されたハリーですが、どろんこ遊びに夢中になったあとは「白ぶちの黒い犬」に表現が変わります。
原文
“In fact,he changed from a white dog with black spots to a black dog with white spots”日本語訳
「ほんとはくろいぶちのあるしろいいぬなのに、しろいぶちのあるくろいいぬになってしまいました」
この2つの文章を読むと、息子は「あれ? 黒い犬だっけ? 白い犬だっけ?」と首をかしげながらも笑ってしまいました。
原題の『Harry the Dirty Dog』のdirtyが「どろんこ」の意味で使われていますが、英語のタイトルだとなんだかクリント・イーストウッドの「ダーティ・ハリー」を思い出してしまいますね!
原文では、ハリーが遊んでいるうちにどんどん汚れていくのを、しっかりと比較級で伝えています。
まずは道路工事(fixing the street)で遊んでdirty、次に鉄道線路(at the railroad)の上で遊んで汽車のすすでdirtier、そしてほかの犬たちと鬼ごっこ(played tag with other dogs)して dirtier still、最後に石炭トラックを滑り台(slid down a coal chute)にして dirtiest of allになってしまいます。
真っ黒になって帰ってきたハリーを見て飼い主の男の子がこんな風に言います。
原文
“There’s a strange dog in the backyard……by the way,has anyone seen Harry?”日本語訳
「うらにわにへんないぬがいるよ。そういえばうちのハリーは、いったいどこへいったのかしら?」
これは困った! と慌てたハリーは、できる限りの芸当を見せ続けます。
ぴょんとさかだち(flip-flopped)、すっとんとちゅうがえり(flop-flipped)、ころんところげて(rolled over)、死んだまね(played dead)ときて、さらに歌って踊ります!
逆立ちと宙返りがflip-floppedとflop-flippedだなんて、英語ならではの表現ですね! ここもリズムをつけて読むと息子は喜びました。
息子には3歳くらいから大事にしている犬のぬいぐるみがありました。ハリーと同じ黒ぶちの白い犬です。自分でそのぬいぐるみに「スッピー」と名付け、寝るときも出かけるときも旅行に行くときですら連れて歩いていました。
そんな風に連れまわしていたため、ある日よく見たらスッピーが真っ黒になっていました! ピンとひらめいた私、いつもどろんこで汚いのにおふろを嫌がる息子に、「スッピーを一緒におふろに入れてよく洗ってあげて! そうしないと“どろんこハリー”みたいにスッピーも家に入れてあげられなくなるよ」と言ってみました。
案の定、焦った息子はスッピーと一緒に喜んでおふろに入ってくれるようになりました!
スッピーは今でも家で息子を見守ってくれています。
この絵本では、ハリーがブラシをくわえて二階へ駆け登っています……。息子と私は「あれ? おふろが二階にある」と、びっくりしました。
アメリカでは各家庭に平均2~3つはバスルームがあるそうです。一階に1つ、二階に2つ、1寝室につき1つという場合も。ここにはアメリカの個人主義が表れていて、親子でおふろに入る習慣はないようです。
もちろん日本のおふろ事情とまったく違い、基本的に湯船にお湯は溜めずシャワーのみ、お湯は溜めても一人1回使い切りだそうで、そのためバスタブはかなり浅めです。
ハリーが洗ってほしくてブラシをくわえている挿絵でも、その浅さがわかりますね!
ここでは入浴時の英単語もいろいろ知ることができます。bathtub(バスタブ)、brush(ブラシ)、soap(せっけん)、scrub(こすって洗う)、comb(くしでとかす)などなど、お子さんと一緒におふろに入るときに使える単語がたくさん出てますよ。
いまだに「カラスの行水」のように素早い入浴のわが息子、それでもおふろ嫌いは完全に治ったようです。しっかり湯船で温まって布団に入れば、絵本の最後のページでぐっすり眠っているハリーのように、幸せな夢が見れるはず!
子どもたち、特に男の子は外で泥だらけになるまでたくさん遊ぶのが仕事のようなものです。親としてはあんまり真っ黒だと洗濯とおふろが大変ですが、そんな“ハリー”のような子供たちを暖かく見守って、健やかに育っていってほしいと願うことが親の仕事かもしれませんね。
「汚い!」「おふろ入って!」と焦らず急かさず、一緒にゆったりした気持ちでおふろに入ってコミュニケーションを楽しみたいです。一緒におふろに入るという習慣が日本にはあって、本当に良かった! とも思う一冊でした。
ライター:suppy
9歳になる息子と今まで多言語学習と世界の絵本に親しんできたアラフォーママです。
いろいろな国の言葉に触れて世界に興味を持ってほしいと思い、こども図書館やおはなし会に通って、たくさんの絵本と出会いました!
子どもと一緒に英語の発音を改めて勉強するつもりで、今も英語絵本の読み聞かせをしています♪
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