
小さい頃は誰でも「空を飛んでみたい!」と一度くらいは夢見たことがあるのではないでしょうか。今回紹介する絵本『Miffy goes flying』(『うさこちゃん ひこうきにのる』、福音館書店)は、うさぎの女の子ミッフィーちゃんがそんな夢を叶えるお話です。
お外で遊んでいたミッフィーちゃんの頭上に颯爽と現れたのは、小型飛行機に乗ったパイロットのおじさんでした。おじさんはミッフィーちゃんを空の旅に招待してくれます。“I’d love that. Yes. Hooray! ”(行きたい!やった!わあーい!)ミッフィーちゃんはワクワクする気持ちを抑えることができません。しかし、ミッフィーちゃんはお母さんから言われた約束事がありました。
原文
“She said, you may do that. But only if you’re sure to wear your cosy scarf and hat. ”日本語訳
「お母さんは言いました。行ってもいいわよ。ただし、ちゃんとスカーフを巻いて帽子をかぶって温かくするならね」
お母さんからの言いつけをしっかりと守り、ミッフィーちゃんはいよいよ空の旅に出発です!
オレンジ色の飛行機は、二人を乗せて空へ飛び立ちます。
高度を保ったまま、真下に広がる森を抜けて海を渡っていきます。家の前で手を振っていたお母さんや、水上を走るボートなど上空から見える景色は、なにもかもが自分より小さく見えます。
しかし夢のようなひとときも、あっという間におしまいです。楽しい時間は長くは続かないんだと、寂しい気持ちがしたミッフィーちゃんでした。
絵本の中では、ミッフィーちゃんの子どもらしい言動が愛らしく描かれています。飛行機に乗る前のはしゃいでいる様子、家に帰らなければならない時間になって落ち込む様子、興奮冷め止まず家に戻った後もお母さんに空の旅ついて話す様子は、読んでいる子どもたち自身も共感できるストーリー。2才になって喜怒哀楽をはっきり主張するようになった我が家の息子とミッフィーちゃんの様子は重なる部分があり、読んでいる親としても微笑ましく思いました。
この本の見どころは、何といってもオレンジ色でスタイリッシュな小型飛行機! 息子は電車・バス・飛行機などの大型の乗り物が大好きです。外で歩いていても、お気に入りの乗り物を見つけては止まって凝視するので、全く歩みが進まないこともしばしば。今回、本を読みながら息子は一生懸命に飛行機を指差し、目をキラキラさせながら「カッコイ! (格好良い!) 」と言っていました。ページ一杯に描かれる飛行機には男の子の夢が詰まっていました。
『miffy goes flying』は1970年にオランダの出版社Mercis Publishingより出版されました。日本語翻訳版『うさこちゃん ひこうきにのる』は、1982年に福音館書店から出版されています。
イラストはすべて単純な直線や曲線が繰り返し使われることによって、余計な線画や細かい描写は全て削ぎ落とされています。今となっては有名な話ですが、ミッフィーちゃんのお口のバッテンは「口」と「鼻」を一度に表現しています。ミッフィーちゃんのお父さんやお母さん、おじさんにあるお口の横棒はというと、「シワ」を表現しているのだそうです。
絵本の左側のページが文章、右側はイラストという風に構成されています。文章は真っ白な背景に太い黒字が使われ、一方でイラストは原色に近い濃い色使いで鮮やかです。絵本を開いたときに、文章とイラスト両方のコントラストによって、イラスト部分がより子供の目を引きやすく、ページ一枚一枚を読者に印象づけます。
オランダの偉大なアーティストであるディック・ブルーナはミッフィーちゃんの生みの親です。初期の「ミッフィーシリーズ」ではキャラクター名が「うさこちゃん」とされていたものの、近年では英語版の名前「ミッフィー」として日本の人々にすっかり定着しています。(なんとオランダでの名前はまた違っていて、もともとは「ナインチェ・プラウス/Nijntje Pluis」と言います。)
2015年には、ミッフィーちゃんの生誕60周年を記念して、日本全国で「ミッフィー展」が開催されました。多くの来場者が居る中で息子と私も家族で訪れ、ブルーナの初期のデザイン画をはじめ、映画で使われたクレイアニメのセットや日本のアーティストとコラボレーションした作品など沢山の展示品を堪能しました。
物語終盤で出てきたミッフィーちゃんのセリフには、魅力的な言葉遊びも含まれていました。
原文
“When you’re having fun, she said, doesn’t time just fly? ”日本語訳
「楽しんでいるときは時間が飛ぶように過ぎていくのね」
おじさんに連れて行ってもらったflying(空の旅)が楽し過ぎて、time flies(時間が飛ぶように過ぎる)というのです。作者が本著で伝えたいテーマを一言で表す、なんとも気の利いた洒落なのでした。
あなたもミッフィーと一緒に空の旅を楽しんでみませんか?
ライター:mayuko
外語大学で第二言語習得やマルチリンガル教育について勉強しました。卒業後、モスクワ生まれのロシア人と結婚し2015年に長男を出産。家族全員で日・露・英のトライリンガルを目指しています!
平日は正社員として働いているため、子どもと遊ぶ時間が充分に取れないことに対して罪悪感に苛まれる時もあります。せめて動物と電車の絵本が大好きな息子のために、いつでも好きな時に本を読める環境を作るよう工夫しています。
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