『The Giving Tree』で与え尽くすことと求め続ける親子関係を考える

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

2010年に村上春樹翻訳による新版が出版され、途切れることなく多くの人に読み継がれている『おおきな木』(あすなろ書房社刊)。本田錦一郎翻訳の旧版(篠崎書林社刊)にもファンが多く、原題は『The Giving Tree』、作者はシェル・シルヴァスタインというアメリカの作家です。

この絵本の最大の特徴は簡潔な英文とモノクロ線画。そのシンプルさと話の深さのギャップに、大人になってもまた読み返したくなる不思議な魅力があります。

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

小さなころから仲良しの少年に、ただひたすら自分の持てる物すべてを与え続けるリンゴの木。やがて少年は青年に、大人になり、リンゴの木から離れていきます。 木は青年になって恋人もできお金もほしくなった少年に、リンゴの実を売ってお金にしなさいと優しく実を差し出します。また時が経ち、今度は結婚して家がほしいと言う大人になった少年に、再び惜しみなく自分の枝をすべて与えていきます。

葉も枝も、実も幹もなくなってしまったリンゴの木は、本当に「幸せ」だったのでしょうか?

木と少年の関係性は読む人によって変わる!

この木が女性的に描かれているとわかる一文があります。

原文
“She loved a little boy”

確かに木が枝を少年に差し伸べたりする様子を見ると、まるで「母と息子」のようです。けれどこの本は対象者が「父と娘」「恋人と彼」「夫婦」だとしても同じように「与え続ける無償の愛」とは何か? を深く考えさせられる普遍性を持っています。

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

実際、私が自分でこの本を以前読んだ時は少年の目線で感じ、9才の息子に読んだ時は母の感情になって物悲しくなってしまいました。そして息子の「え……? この子、ひどいよね?」という感想にびっくりしました!私が以前読んだ時と同じ気持ち!

すべてを与え尽くす木と求め続ける少年の関係を歪んだ「愛」の形としか受け取れなかった昔の自分と、欲張りな少年を率直に「ひどい」と言い切る息子を見て、この物語の「自分を映し出す鏡」のような魔力を再発見しました。

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

今の私には、この木の気持ちがよくわかります。たとえ何もあげる物がなくなっても愛する子に何かしてあげたいという気持ち、それがこの絵本ではわかりやすく木の葉や枝などで表現されていますが、リンゴの木の「いつか帰ってくるその子を待って、いつでもそこにいる」という「心」が「無償の愛」を表現しているのでは? と思いました。そして、親という漢字が「木」に「立って見る」と書くことをふと思い出しました。

英語で読んだ後、日本語の旧版の読み聞かせをしましたが、息子はやはり「この子は木に頼り過ぎ! ぼくならこんなに持って行かない」と彼なりの批判をしていました! それが本心なら、将来はまあまあ自立してくれるのかな? と少し安心しました。

何才になっても何度でも読める本

この本に登場する少年の年齢は、最初の「ぼうや」から最後の年老いた「おとこ」まで長いスパンで語られます。そのためか、この絵本の対象年齢が旧版では3才~老人となっていました。新版の訳では、The boyは最初から最後まで「少年」となっているので、原文には忠実ですが、個人的には旧版の訳がわかりやすく感じます。ただ、木にとっては少年が何才になっても「少年」だと考えると、新訳の方がより大人向けに訳されているのでは?    と思います。この幅広い年齢層に受け入れられる表現が、長く読み継がれる理由かもしれません!

読み聞かせる年齢はさすがに3才からでは早いと思いますので、初めは幼稚園児くらいから「木」に関するtree,leaves,forest,trunk,branch,appleなどの単語を読んで絵とともに楽しみ、もう少し大きくなったらgather her leaves、climb up her trunk、swing from her branches、eat applesなど動詞を足して親しんでいきましょう!

小学生になって読解力がついてきたら、ぜひ後半の長い文章も一緒に読んでみて、どう思ったか聞いてみてください。意外な答えが返ってくるかもしれません!

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

この物語の肝の一文といえる“And the tree was happy…but not really.”には、旧版と新版の訳し方に賛否両論があるようです。

旧版
「きは それでうれしかった……だけど それは ほんとかな。」

新版
「それで木はしあわせに……なんてなれませんよね。」

この文は、少年が木からすべてを持ち去ってしまった後、ただの切り株になってしまった木の本心を語った部分であり、この気持ちの受け取り方で結末までが変わってしまう大切な一文です。あなたなら、旧新どちらの訳に共感しますか?

海外絵本・英語絵本におすすめの『the giving tree』

キリスト教の「愛」の精神を学ぶ

「母なる大地」というように自然、特に生産性のある大地や植物はsheと女性代名詞が当てられますが、この物語にはキリスト教の「愛」の教えも反映され、木と少年が「神と子」「自然と人間」の関係性にも見えてきます。

神に助けを求めるだけ求め、自然を利用するだけして何の「恩」も返さない人間―しかしキリスト教における神が人間に与える愛こそ「無償の愛(アガペー)」だと教えられます。 母の愛・母性は見返りを求めないものとよく耳にしますが、母は神ではなく人間なので、やはり子どもからの愛という見返りも求めてしまいます!

しかし、この木のように与え続けることが「愛」の本質だとしたら、子育ての観点から考えると、与えすぎると子どもをダメにするのでは? とまた考え込んでしまいます。過保護と自立のバランスは、非常に難しいものですね!

幼児まではただ可愛くて母に懐いていた子どもも、青年になれるにつれ少しずつ離れていき、大人へと成長すれば親の幹を切って舟を作り、社会という大海原へ船出していくでしょう。木に立って見守る親の役割をこの本から学んで、その時が来たら快く送り出したいと思っています。

この本は幼いころに読み聞かせたり、人生のターニングポイントに贈ったり、無償の愛を求める子育ての現実に傷つき疲れた時にまたふと読み返したい、長いお付き合いができる一冊かもしれません。

プロフィール

suppy

ライター:suppy

9歳になる息子と今まで多言語学習と世界の絵本に親しんできたアラフォーママです。
いろいろな国の言葉に触れて世界に興味を持ってほしいと思い、こども図書館やおはなし会に通って、たくさんの絵本と出会いました!
子どもと一緒に英語の発音を改めて勉強するつもりで、今も英語絵本の読み聞かせをしています♪

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